健康食品として有名な発酵食品。食べ過ぎると、高血圧や腸カビのリスクがあることはご存じでしょうか。
本記事では、発酵食品の「デメリット」に焦点を当て、健康的な食べ方を解説します。
記事後半では、健康に良いおすすめの発酵食品を5つピックアップしています。
パンや醤油、ビールも発酵食品です。食生活とは切っても切れない関係にある発酵食品のデメリットを理解して、ダイエットや食事に役立ててください。
そもそも発酵とは

発酵とは、微生物の働きにより、食品や原材料が人間にとって良いものに変化する現象を指します。発酵を起こす微生物には、酵母や細菌、カビなどがあります。
よく間違えられる現象に「腐敗」がありますが、腐敗は微生物の働きによって人間の好ましくないものに変化する現象です。
そして、発酵によって作られた食品が「発酵食品」です。発酵食品には、以下のようなものがあります。
微生物 | 食品 |
---|---|
麹かび | 日本酒・味噌・醤油 みりん・かつお節 |
酵母 | パン・アルコール飲料 |
乳酸菌 | 漬物・チーズ ヨーグルト |
酢酸菌 | 酢 |
納豆菌 | 納豆 |

発酵食品を摂る3つのデメリット
「発酵食品」と聞くと、プラスのイメージを持っている方が大半でしょう。
しかし、発酵食品を摂りすぎると以下のようなデメリットを被ります。
- 塩分が多く高血圧のリスクが上がる
- 腸カビが発生しやすくなる
- IBS・SIBOの症状が悪化する
塩分が多く高血圧のリスクが上がる
発酵食品は塩分が多い傾向にあり、食べ過ぎると過剰に塩分を摂取することとなります。塩分を摂りすぎると、高血圧になるリスクが高まるため。注意が必要です。
主な発酵食品に含まれる塩分量
食品 | 塩分量 |
---|---|
こいくち醬油(大さじ1) | 2.6g |
うすくち醬油(大さじ1) | 2.9g |
味噌(大さじ1) | 1.7g |
白菜キムチ(100g) | 2.9g |
プロセスチーズ(100g) | 2.8g |
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」における1日の塩分摂取目標量は、成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満です。
例えば、うすくち醤油大さじ1には、1日の目標量の35%~40%もの塩分が含まれています。
このことから、発酵食品には多くの塩分が含まれており、注意しなければならないことがわかります。

ただし、ヨーグルトや納豆、パンなどの塩分が少ない発酵食品もあります。工夫して食材を選ぶことで、発酵食品を摂りながら塩分を避けることも可能です。
発酵食品を避けるのではなく、食材をうまく選んで塩分過多にならないようにしましょう。
腸カビが発生しやすくなる
発酵食品を摂りすぎると、腸カビと呼ばれるカンジダやマイコトキシンが過剰に発生することがあります。
腸カビは少し存在する程度であれば問題ありませんが、過剰に増えると腸内フローラが乱れて不調を引き起こします。
発酵食品による腸カビについては、以下の記事で詳しく解説しています。
IBS・SIBOの症状が悪化する
発酵食品を摂り過ぎると、IBS(過敏性腸症候群)やSIBO(小腸内細菌異常増殖)が悪化することがあります。
IBSは短鎖脂肪酸が多いほど重症の傾向にありますが、発酵食品を摂ると短鎖脂肪酸が多く生成されます。
よって、発酵食品を摂りすぎると、IBSが悪化する可能性が高まります。
また、発酵食品を摂りすぎると、腸内細菌が異常に増殖してSIBOが悪化します。
このように、発酵食品が腸に悪い影響を及ぼすこともあるため、IBSやSIBOの症状を持つ方は注意が必要です。
発酵食品のメリットと健康効果
これまで発酵食品のデメリットを解説しましたが、メリットも多くあります。ここでは、発酵食品のメリットや健康効果を解説します。
- 腸内環境が整う
- 味が良くなる
- 保存性が向上する
- 血圧の上昇を抑えられる
- 消化吸収しやすくなる
- 免疫が高まる
腸内環境が整う
発酵食品を食べると、発酵食品に含まれる善玉菌が腸内に届き、腸内環境が整います。
腸内環境が整うと、便通・栄養の吸収率・代謝など、身体のさまざまな機能が改善します。
腸は「第二の脳」といわれるほど、精神状態や健康に影響を与える臓器です。
腸内環境を整えることで身体のさまざまな不調を改善できる可能性があります。体調が優れない場合には発酵食品を摂ってもよいでしょう。
味が良くなる
食品を発酵させることで、食品の味を向上させることができます。
特に、発酵することで「うま味」が増します。これは、発酵によって「うま味」の成分であるグルタミン酸やアスパラギン酸が増えるためです。

例えば、大豆の発酵食品である味噌や醤油は、原料である大豆に比べてグルタミン酸の含有量が大きく増加しています。
また、発酵食品に含まれる酵母やカビが出す有機酸類や炭酸ガスにより、独特で複雑な風味や香りを生みます。
このように、食品を発酵させることで味や風味、香りが向上し、嗜好性を高められます。
保存性が向上する
食品を発酵させると、保存性が向上します。発酵によって保存性が高まる要因はいくつかあります。
発酵食品の保存性が高い理由
- 有機酸が食品のpHを下げる
- アルコールの殺菌作用が働く
- 塩分が水分活性を下げる
醤油や味噌、みりんなどの調味料が長く持つのも、発酵が大きく関与しています。
血圧の上昇を抑えられる
発酵食品には、血圧を抑える働きがあります。
発酵食品を摂ると、血圧を上げるACE(※1)の働きが抑えられることがわかっています。
また、NO(※2)の産生を向上させて、血管の筋肉である血管平滑筋をリラックスさせる効果もあります。
※1 ACE:Angiotensin-Converting Enzyme(アンジオテンシン変換酵素)
※2 NO:Nitric Oxide(ニトリックオキシド、一酸化窒素)
しかしながら、発酵食品の塩分は高い傾向にあります。よって発酵食品を摂りすぎると、塩分過多になり、高血圧のリスクが向上します。
血圧が高い方は、塩分の少ない発酵食品を摂るようにしましょう。

消化吸収しやすくなる
発酵食品は、発酵によって食品が消化しやすい形に変わっていることから、消化吸収しやすい特徴があります。
ここで注意したいのが、発酵食品を摂ることで菌が腸内に棲みつき、消化吸収を助けるわけではないということです。
あくまで、発酵食品が作られる過程で、食品が消化吸収しやすい形に変わっているため、消化吸収しやすくなっています。
免疫が高まる
発酵食品を摂ることで、免疫を高められます。発酵食品をバランスよく食べると、腸内細菌が多様化し、免疫の炎症が改善されることがわかっています。
よって、発酵食品を食べることは、病気を予防することにもつながります。
健康に良いおすすめの発酵食品5選
健康に良いおすすめの発酵食品は、以下の5つです。
カツオ節:アミノ酸が豊富
カツオ節は、アミノ酸が豊富に含まれており、塩分も多くありません。うま味を呈する食品のため、料理の味も高められます。
おひたしや豆腐などのアレンジとして手軽に加えられるので、忙しい方にもおすすめです。

ヨーグルト:乳酸菌・ビフィズス菌が含まれている
ヨーグルトには、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が豊富に含まれています。食べ続けることで、腸内の善玉菌を増やすことが可能です。
しかしながら、乳酸菌やビフィズス菌は腸内に棲みつくことはありません。
ヨーグルトを食べることで乳酸菌やビフィズス菌が腸内に存在する状態を作り出せますが、この効果は一時的です。
実際、ヨーグルトを食べなくなると、数日~1週間ほどで乳酸菌やビフィズス菌は消えてしまいます。
そのため、乳酸菌やビフィズス菌の効果を得たい方は、毎日食べ続けるようにしましょう。
お茶:気軽に飲めて糖分・塩分なし

紅茶やウーロン茶などは、健康的に摂れる発酵食品です。糖分や塩分が含まれていないため、ダイエット中にもおすすめできます。
注意すべき点はほぼありませんが、カフェインの摂り過ぎには注意してください。
以下の表を参考に、多くても一度に200mg、1日当たり400mg以下になるようにしましょう。
食品名 | カップ1杯(200mL)当たりの カフェイン含量 |
---|---|
コーヒー | 120 mg |
紅茶 | 60 mg |
ほうじ茶 | 40 mg |
ウーロン茶 | 40 mg |
エナジードリンク | 64~600 mg |
キムチ:カプサイシンが脂肪燃焼・代謝向上
キムチはダイエット中におすすめの発酵食品です。キムチに含まれるカプサイシンを摂ると代謝が向上し、脂肪が落ちやすくなります。
ただし、塩分が多く含まれているので、食べ過ぎには注意が必要です。
納豆:たんぱく質が摂れる
納豆には、善玉菌である納豆菌が多く含まれています。腸内環境を整えられるうえ、たんぱく質を摂ることもできます。塩分も少ないため、おすすめの発酵食品です。
また、納豆は白米と相性がよい食品です。白米はリジンというアミノ酸が不足しています。
アミノ酸は、20種類全てが揃わなければたんぱく質を合成できません。そのため、白米はリジンの少なさが原因でたんぱく質を多く生成することができません。
納豆にはリジンが豊富に含まれているため、白米と一緒に食べることでリジンの不足を解消でき、たんぱく質を効率よく合成できます。

発酵食品に関するよくある質問
- 発酵食品を摂りすぎると腸カビが生えるって本当?
- 発酵と腐敗の違いは?
発酵食品を摂りすぎると腸カビが生えるって本当?
発酵食品を摂りすぎると、腸カビであるカンジダやマラセチアなどが増殖することがあります。しかしながら、これらはもともと腸内に存在するカビです。
異常に増えることで身体に害を及ぼしますが、存在しているだけで害を与えるわけではありません。
どの食品にも言えますが、食べすぎや偏食は良くなく、バランスの良い食事をすることが大切です。発酵食品も、摂り過ぎには注意しましょう。
発酵食品と腸カビの関連性は、以下の記事で詳しく解説しています。
発酵と腐敗の違いは?
発酵と腐敗は、どちらも微生物が活動した結果起こるものですが、違いは「人間にとって有益か有害か」という点です。
すなわち、人間にとって有益である微生物の活動は「発酵」となり、人間にとって有害な微生物の活動は「腐敗」といわれます。
このように、発酵と腐敗はどちらも微生物の活動を指しますが、人間にとって都合の良いものか否かによる違いがあります。
まとめ|発酵食品は適度に摂れば健康に
発酵食品は、腸内環境を整えたり消化吸収を助けたりする効果を持っていますが、食べ過ぎると高血圧やIBSが悪化することもあります。
どの食品にもいえますが、健康的なものだからといって、たくさん食べればよいわけではありません。水も飲み過ぎれば、体に毒です。
発酵食品は適度にバランスよく摂ることで、健康効果を発揮します。
普段食べない発酵食品をスーパーなどで見つけたら、手に取ってみてはいかがでしょうか。